暗号資産によって起こること第1部:ビットコイン株取引所の歴史

The Implications of Crypto Assets Part 1: A History of Bitcoin Stock Exchangesの翻訳です。

 

 KickstarterやIndiegogoなどのクラウドファンディングサービスが有用なものであることに多くの人々が気付き始めていますが、世界中の開発者はそれらの集中型のサービスを完全に置き換え、サービスの品質を向上させる新しい技術の開発に既に取り組んでいます。オンラインサービスを利用してのクラウドファンディングは現在非常に素晴らしいものですが、投資家が真に欲するものを提供するのに利用することはできません。結局のところ、投資家は初期投資による利益を株価の上昇や配当金によって得たいと思っているのです。Bitcoinを支えている技術があれば、誰でもすぐに特定の企業の株によって価値が担保されている暗号株や金などの物理的な資産によって価値が担保されている暗号資産を作ることができます。そうすると、金融市場において見られる多くの障害が取り除かれます。我々は目論見書を書き上げて、それを世界中の人々が閲覧できるようにオンラインに投稿することが既にできますが、分散型の交換所はこの概念を次の水準へと進めます。

ビットコイン株取引所の歴史
 将来において起こるかもしれないことを見ていく前に、ビットコイン株の世界において既に起こったことについて見なければなりません。我々が待ち望んでいる分散型の交換所はまだ出来ていませんが、集中型のビットコイン株交換所なら既に幾つか出来上がっており、それらは調べてみるとかなり興味深いです。それらのビットコイン株交換所には、分散型の暗号資産によって可能となることを垣間見ることができます。ビットコイン株交換所において投資家を惹き付けるために全ての人間がしなければならないことは、株主のために事業計画書を書き上げて、どのようにして金銭を稼ごうとしているのかを説明することです。暗号資産の交換が始まった初期には多くの詐欺や自分だけが利益を独占しようとする企てがありましたが、一方でこれらの集中型の株交換所はASICMinerやSatoshi Diceなどの多くの尊敬すべき企業への投資機会の発生地でもありました。

Global Bitcoin Stock Exchange
 Global Bitcoin Stock Exchange(GLBSE)は暗号資産分野における最初の主要なサービスでした。当初はコマンドラインプロンプトからしかこの交換所に接続することはできませんでしたが、最終的には完全なウェブインターフェイスを備えるまでになりました。このサービスを使って発行された資産の多くは完全な詐欺でしたが、それは金融の世界に全く新しい概念を齎しました。企業を作りたい起業家はGLBSEに行き、数分の内にその企業の株を作り、配当の形で投資家に利益を分配することができました。このサービスは特に問題も起こることなく1年以上の間上手く行っていましたが、最終的には法的な問題によって開設者によって停止されました。英国に住んでいたGLBSEの開設者の1人はオンラインの匿名株交換所に関して法的な勧告を受けました。言うまでもなく彼が受けた勧告は直ちに交換所を閉鎖することを要求するものであり、さもなければ、資金洗浄、無免許の株交換所の営業その他の犯罪行為により告訴するという内容のものでした。

MPEx及びSatoshi Dice
 喜ばしいことにGLBSEが有名になっていた頃、目立たないながらももう1つの交換所が操業していました。MPExはPGPを通して投資家や資産の発行者のために暗号学的な有価証券を提供しているという点で独特の交換所です。これはサイト上で情報をやり取りする人々が匿名のままでいられる可能性があるということを意味しています。多くの人々はMPExが有名になった主要な出来事としてSatoshi Diceの株式公開(IPO)を挙げるでしょう。Satoshi Diceは厳密に言えばビットコインの世界において操業する最初の事業の1つであり、今日でもまだ世界中の何千ものビットコイン使用者によって利用されています。それは基本的に不正のないことが実証可能な形で開催されるさいころゲームです。使用者はSatoshi Diceのウェブサイトによって生成された無作為な番号に対してビットコインを賭けることができます。Satoshi Diceは2012年に約50万ドルの利益を上げましたが、株式は最終的に投資家から買い戻されました。自社株買いの処理が完了した後、会社は最終的に1150万ドル相当のビットコインと引き換えに匿名の個人に売却されました。

BTC-TC及びBitfunder
 BTC-TC及びBitfunderは2013年に最も広く利用されたビットコイン株交換所であり、両者ともGLBSEの代替として見られていました。当初これらの交換所は動いていましたが、政府がビットコイン全体を詳細に注視し始めたために、最終的には開設者によって停止されました。2つの最も人気のある暗号株交換所が閉鎖されたという事実は、暗号通貨の世界には分散型の交換所が必須であるということを期せずして示すことになりました。

Havelock及びCryptostocks
 過去の出来事から集中型の暗号株交換所には問題があるということが分かっているにも拘らず、この分野にはまだ2つの主要なサービスがあります。Havelock Investmentsはパナマを拠点にしている免許を受けている民間投資会社であるThe Panama Fundによって所有されています。この免許を受けており、公明正大である操業が恐らく最も可能性のある集中型のビットコイン株取引所の形態です。CryptostocksはBTC-TCやBitfunderなどの過去の類似物で見られたのと同様の、法的に違法であるか適法であるか曖昧な領域で操業しています。これらの2つのサービスは従来の金融市場と比較して投資家に素晴らしい選択肢を与えますが、実際には更に良いやり方があります。

集中型のビットコイン株取引所における問題
 集中型のビットコイン株交換所には幾つかの異なる問題が存在しています。集中型のビットコイン株交換所はどのような種類の資産に対しても即時に株式を発行することができるという素晴らしい働きをしますが、その一方で単一障害点を有します。現在開発が進められているビットコインプロトコルの新しい機能があれば、集中型の交換所を不要なものとすることができます。集中型の交換所に見られる問題の多くは集中型の通貨の問題に類似しています。次のような理由から交換市場にはビットコインを支える技術が適用される必要があります。
  1.規制
   世界各地で多くの集中型のビットコイン株交換所が有価証券の発行に関する規制に屈してきました。Havelock Investmentsは完全に合法であると思われる方法で現在も操業していますが、顧客確認及び犯罪収益移転防止のための使用者情報の収集を明らかに行っていません。コスタリカに行ってLiberty Reserveを停止させたことのある米政府ならば誰にも邪魔されずにパナマに行ってこのサービスの操業を停止させることができるでしょう。単一障害点がなければ、交換所を停止させることは不可能です。これはビットコインの主要な利点の1つでもあります。
  2.検閲
   集中型の交換所は使用者の資産の市場公開が許されるかどうかを最終的に決定する権利を有します。分散型の交換所の場合はその実体はソフトウェアでしかありませんから検閲は不可能です。作成される資産や交換所に公開される資産を選別する役割を有するものは存在しません。
  3.手数料
   最後に考慮しなければならないのは集中型の交換所には手数料が伴うということです。集中型の交換所は通常取引を行う毎に手数料を徴収します。取引所に資金を預けたり、取引所から資金を引き出す際にも手数料を課すかもしれません。分散型の交換所の場合、手数料はほんの少しであるか、もしかしたらゼロであるかもしれません。