Ethereumは「暗号通貨2.0」のネットワークを始動する

Ethereum Launches ‘Cryptocurrency 2.0’ Networkの一部の翻訳です。

 

 今週の土曜日に暗号通貨を支持するとある開発者集団が新しいシステムを公開しようとしている。彼らはこのシステムが暗号通貨の標準を刷新することを望んでいる。
 公式にはEthereumという名称が付けられているのだが、開発者集団はこのシステムを「暗号通貨2.0」と呼んでいる。このシステムは分散型の採掘ネットワークとソフトウェア開発基盤が1つに纏められたものであり、特筆すべき点として、使用者は独自の暗号通貨を作成することができる。
 この計画は北米ビットコイン会議において発表される予定である。また、この計画はBitcoin Magazineの共同創刊者であるVitalik Buterinの発案によるものである。彼はブラウザ上で動かすことのできる2つの競合する財布であるDark Wallet及びKryptoKitの開発にも携わっている。彼は新しい暗号通貨がEthereumを使って作成され、Ethereumの上で動作してほしいと思っている。

 「Ethereumの上で暗号通貨を作れば自分で採掘をする必要はない。それが重要なのだ。Ethereumは新しい暗号通貨の作成を非常に容易なものにする」

採掘
 EthereumネットワークはDaggerと呼ばれる独自の採掘技術を使用する。Daggerは採掘の過程を公平公正なものとするためにScrypt採掘アルゴリズムにおける幾つかの仕組みを利用する。
 Scrypt(ライトコインなどの暗号通貨に使用されている)は強力なASICを持っている一部の選ばれた使用者だけが不公正な優位性を享受することがないように、CPUを使った採掘が行いやすいように設計されている(逆にASICを使った採掘が行いにくいように設計されている)。しかしながら、徐々にではあるものの、その防護は回避されてきており、また、ASIC用の強力な採掘機器が開発されてきている。そこで、Daggerはもう一度採掘を平等なものにしようとして、Scryptの仕組みを微調整している。
 Daggerは最初の概念実証であり、Ethereumの開発者集団は最もASICを使った採掘が行いにくい可能性がある仕事証明のアルゴリズムを探すために競技会を開催することを検討している。開発者集団は出資証明の手法についても研究しており、Slasherと呼ばれる新しい出資証明のアルゴリズムを開発している。このアルゴリズムは古いアルゴリズムにある多くの問題を解決する。

契約
 つまり、Ethereumは採掘ネットワークである。しかしながら、ある種の基本ソフトウェアでもあり、開発者集団によって設計されたプログラミング言語を用いて製作され、Ethereumの上で「契約」の形態で公開される応用ソフトウェアを実行することができる。
 契約とはEthereumネットワークの上でEthereumの口座番号を使って自動的に資金のやり取りを行うプログラムである。
 もし私が「ダンコイン」を作って、それをシステムの上に契約として公開し、あなたにダンコインの口座番号を与えたならば、あなたは私にダンコインを送金することができる。むしろ、私に直接ダンコインを送金するのではなく、ダンコイン契約の口座番号に伝送文を送信する。この伝送文には私の口座番号と額面が含まれている。契約が実際のところは応用ソフトウェアであるということを念頭に置いて考えれば分かるかと思うが、契約はコードを実行して、額面分の価値を保存する。

有色貨幣
 契約は資産によって価値が担保された副次的な通貨を作成することを可能にする。資産は金地金でも他の通貨でも電子的な財産でも有価証券でも何でも良い。
 白書によると副次的な通貨は多くの可能性を開く。その1つとして有色貨幣の作成がある。有色貨幣とは、電子的または物理的な資産(株式、金融派生商品、自動車、住宅)の明確な所有権を表す貨幣である。白書によるとEthereumは有色貨幣の開発を妨げてきた幾つかの基本的な欠陥を解決することができる。
 独自の用途のために作成される通貨は電子商取引において極めて強い影響力を有するとButerinは説明する。

 「Paypalドルは独自通貨である。航空会社のマイルは独自通貨である。スターバックスの商品券は独自通貨である。潜在的な応用は限りない」

 金融派生商品はもう1つの興味深い選択肢であり、幾つかの異なる方法を使って実装することができ、様々な契約に結び付けることができる。金融派生商品は複雑な取引を可能にするだけでなく、金融派生商品を利用しない場合と比較して複雑な取引をある程度単純で自動化されたものにする。注意すべき点は、ネットワークの上には強制力のあるものがないので、全ての金融的な契約は完全に担保が付いている必要があるということである。
 Ethereumは単に必要な契約を設計するだけで、本人証明システムや評価システムにおいても使用することができる。分散型の自主的な組織やP2P賭博やオンライン賭博や予測市場や鎖に繋がれた(訳注:原文では「on-chain」となっているがいまいち意味が分からない)株式市場や保険業においても使用することができる。
 Ethereumの主要な用途の1つは開発者が通貨を他の通貨、商品または有価証券に連動させることを可能にする専用のデータ形式を用いる標準化された契約になりそうである。
 Ethereumは通貨以上のものとなるように設計されているが、EthereumネットワークはEtherと呼ばれる独自通貨を主軸にもする。Etherは採掘者に与えられ、スパムを防止し、取引手数料を支払う手段としての役割も果たす。Etherは最初の資金調達で売られるが、それ以降は採掘によって得られ、永続的な直線状のインフレが生じることになる。上限はないとButerinは言う。

暗号金融のための基本ソフトウェア
 ところで、この基盤は実際のところ内部でどのように動作しているのか? 契約はEthereumネットワーク上の口座番号に付属させることができるが、口座には何が置かれているのか? そこには口座の現在の状態や現在のブロックにおいて作成した取引と共に契約のコードが置かれている。
 しかしながら、口座番号は論理的なものである。では、実際のデータはどこに格納されているのか? それはEthereumのブロック鎖の中の採掘されたブロックの中に格納されている。そして、新しいブロックがずっと採掘される。
 最も明白な懸念はブロック鎖が巨大なものになるということである。全ての完全なクライアントはEthereumのブロック鎖の複製を有する(スマートフォンの場合は違うけれども)。もしブロック鎖が沢山の独自貨幣の契約を含んでいて、全ての独自貨幣が何千もの口座番号を有しているとしたら、それは沢山のデータである。
 開発者集団は機能的なデータ構造を用いてこれを解決したとButerinは言う。Ethereumはそのデータの全てを木の枝として格納する。ブロックが続いていく中で木には少しの変化しか起こらず、システムは非常に圧縮された形で多くの木に共通したデータを格納する。
 Ethereumはビットコインの入出金に基づいた仕組みも使わない。代わりに、口座毎に残高を1つのデータにして格納するだけである。